第1回はブラックホールについて基本的なことを説明しました。 ブラックホールが光を含むあらゆる物質を呑み込むおそるべき重力の井戸であるという点以外にも、驚異的な特徴がいくつも存在します。その1つに、あまりにも強い重力によって、ブラックホールの近傍では時間の進み方が遅くなる現象があります。 今回はそれらブラックホールの特徴と、それによって何が起こるのか、また、どういう利用法が考えられるのかを解説します。

物体の速度が光速に近づけば近づくほど、その物体上の時間の進み方は遅くなっていきます。もっとも、目に見えてわかるほどの差が生じるのは、亜光速、すなわち限りなく光速に近い速度に達してからなのですが…。
アインシュタインが唱えた特殊相対性理論によれば、光速度は常に一定であるが、時間の進み方は相対的に変化することになります。 これはどういう意味なのでしょう?

移動中の物体の上では、光の速度は実際の光速度に物体の速度を足したものになるはずです。 しかし、光の速度は常に一定です。
とすると、高速で移動中の物体上では、時間の流れ方が遅くなっているため、光速度が変わっていないことになります。すなわち、時間の流れは変化するのです。
これは、実際に原子時計を使った実験で実証された効果であり、相対性理論の正しさの証拠でもあります。

日本では「ウラシマ効果」、アメリカでは「リップ・ヴァン・ウィンクル・エフェクト」と呼ばれているこの効果は、SF小説ではおなじみのもので、「トップをねらえ!」でも2話や5話で、ノリコの乗った機体が任務のために亜光速まで加速したため、一気に時間の進み方が遅れてしまい、地上とのズレが生じる描写が登場します。

実は、これと同じ効果が高重力下でも起こります。

アインシュタインの一般相対性理論によれば、時間と空間、質量とエネルギーはそれぞれ等価であるとされます。そして、第1回にも解説したように、質量のある物質の周辺では、その質量に応じて時空が歪むことになります。

つまり、高重力下であればあるほど、光の進む時空は歪んでいることになります。つまり、歪んでいない時空を通っているときよりも、実は長い距離を移動しているのです。当然、移動にかかる時間も長くなります。
ところが、時空の歪みは3次元空間的には感知できません。すなわち、我々から見た場合、同じ距離を移動しているにもかかわらず、高重力下では、光が移動にかかる時間が長くなることになります。
しかし、前にも書いたように、特殊相対性理論によれば、光速度は不変です。とすれば、高重力下では光の速度が遅くなるのではなく、時間の進み方が遅くなるというという結論になります。
「トップをねらえ!」では第6話のラストシーンでこの高重力による時間の遅れが登場します。木星をブラックホール爆弾化したバスターマシン3号を起爆するため、その内部にもぐり込んだガンバスターは、起爆直後、爆縮を始めたブラックホールの間近にいたため、脱出に成功するまでのあいだに、高重力による時間の遅れが生じ、次いで脱出時に亜光速で長時間飛行したためさらに時間の遅れが加算され、ワープ航法によって最終的に地球に帰還したときには、ガンバスター内部ではほとんど時間は経過していなかったにもかかわらず、地球では約1万2千年もの時間が経ってしまっていたのです。

ウラシマ効果は恐ろしいものですが、逆にこれを積極的に利用することも考えられないわけではありません。つまり、一方通行ではありますが、一種のタイムマシンとして利用することも可能なのです。ただし、未来に行くことはできても、戻ってくることはできないのですが…。