

太陽系に侵入する化け物たち

かつて人類は太陽系を越えて、遠くの宇宙へと飛び出した、しかしそこで出会ったのは、恐ろしい「宇宙怪獣」軍団だった。人類は、巨大な宇宙戦艦や最強の兵器バスターマシンを操り、努力と根性をもって、宇宙の彼方からやって来る宇宙怪獣に戦いを挑んだ。そして長く苦しい戦いの末に、宇宙怪獣の本拠地を叩き潰し、勝利したという。しかし、すべては昔の話である……。
時は流れ、人間の文明は拡大の意欲を失い、次第にその版図を縮小していった。それは地球古代史でのローマ帝国の縮小に似ていると言えるだろう。人類の勢力範囲は、少しずつ、しかし確実に狭まっていき、やがては太陽系の中だけになってしまった。勢力範囲の減少には、縮体炉の廃棄、ワープ技術の封印も一因だったといわれている。また種自体の勢いがなくなり、黄昏時代に入ったのだという者もいる。とにかく人類は太陽系の中に引きこもり、その中で安寧を貪るうちに、宇宙に恐ろしい脅威がいたことをすっかり忘れてしまったのだ。
そんなときに、それは突如として帰ってきたのである。グロテスクな姿態に奇妙な警戒色。宇宙怪獣の再襲来に、地球圏は驚天動地に陥った。宇宙軍は必死に防衛戦を行ったが、簡単に返り討ちにあってしまった。そんな人類の慌てふためくさまをあざ笑うかのように、宇宙怪獣は人類の生活圏に侵入しつづけたのである。その後、トップレスの力を動力源として動くバスターマシンが開発され、ようやく人類は宇宙怪獣を太陽系の外に追い出すことができたという。しかしそれは、宇宙怪獣と地球のトップレスが操るバスターマシンとの、延々と続く闘争史の始まりに過ぎなかったのだ……。これが宇宙怪獣に関するおおまかな歴史である。時代の流れと混乱から多くの資料が散逸し、いまでは細かい経緯などは不明となってしまっているらしい。そこで今度は個々の宇宙怪獣を見ていこう。三巻までのところで登場している宇宙怪獣は三種。彼らの姿や行動を検証し、現在の宇宙怪獣を考えてみよう。
(第一巻登場)


高速戦闘を得意とする通常のタイプとは明らかに違う、一話の宇宙怪獣。かといって格闘戦が得意でもない様子。これも宇宙怪獣の戦術の変化なのだろうか。 |
内地である火星地表へ、隕石に偽装して単機突入してきた勇気ある宇宙怪獣。長い四本の足や蛇腹状で太い腹部を持っており、全体的な印象からは昆虫のようなニュアンスを感じさせる。前作『トップをねらえ!』で、トップ部隊が戦った兵隊級の宇宙怪獣に似ているが、大きさは五倍強とあきらかに別種。もっとも、ディスヌフを含めたこの時代のバスターマシンが50m級なので、格闘戦などを展開するのにちょうどいい大きさといえる
だろう。
ところがこの宇宙怪獣、ラルクが「知らないタイプ……新種かな?」と言っているように、いままでは存在が確認されていないものだったりする。それもそのはず、トップレス部隊と宇宙怪獣の戦いの場は主に宇宙。上下左右の感覚に乏しい空間戦闘で、脚だの触手だのは重要性が乏しいからだ。
それじゃあ、バスターマシンに手足があるのはどうして?という疑問がでるが、それは操縦者が人間だからということになる。自らの
肉体に近い感覚で動かすことが出来るというのは、反射的な行動を起こすときにアドバンテージになるのだ。
閑話休題、一方でこの宇宙怪獣だが、火星にやってくるのにわざわざ隕石のフリをしたり、惑星重力から脱出するためのブースター能力を持っていたりと、戦闘能力以外の部分に能力が割かれているのも特徴だった。以上のことから、この宇宙怪獣は戦闘用ではなく、偵察用だろうと推測されている。
だが、人口のほとんどが住んでいる地球や、首都がある月を偵察するならともかく、のん気な田舎といった風情の火星に偵察兵を送り込んでなにを調べるつもりだったのだろう?火星の沿岸部に送り込まれたこの宇宙怪獣は、パトロールをしていたマシーン兵器に発見され、予言によって待機していたトップレスと交戦している。ところがその後突然、火星からの脱出を試みた……。この短い期間に、この宇宙怪獣はどんなデータを入手したというのだろうか? 宇宙怪獣の不可解な行動には、首をかしげざるをえない。火星を離脱するときに宇宙怪獣が持っていたのは、体毛に引っかけてしまったアンドロイドのノノ一体だけ。まさか嫁さん候補でも探しに来ていたのだろうか(笑)。
(第二巻登場)


ハトリの乗る戦艦の横を悠々と通り過ぎる宇宙怪獣。その行動は余裕からくるのか、それとも歯牙にかける価値もないとか? |
全長300メートル級の、宇宙軍の新型戦艦ララ級。そのララ級が子供に見えてしまうぐらいの巨体を誇る宇宙怪獣だ。唐突に火星軌道にワープアウトし、ハトリ大佐の艦隊を蹴散らしたが、ニコラのバスターマシン・ヴァンセットによって倒されてしまった。巨体に似合わぬ超スピードと、強力な光弾や針による砲撃能力を持っている。この宇宙怪獣にはビーストロン級という識別名称がついており、いままでにも大きな会戦で何度か目撃されている。つまり宇宙怪獣の中でも、重要な作戦に起用されるレアものなのだ。
ニコラはこの宇宙怪獣が一巻に登場した偵察型宇宙怪獣を回収するためにやってきたのだろうと推察している。この予測が正しいとするならば、宇宙怪獣はかなり高い知性を持っており、連携して任務にあたるという作戦までも考える能力を持っているといえることになる。さらに、このレアで強力な宇宙怪獣を準備する必要があったところをみると……火星での強行偵察は、かなり重要度が高い任務だったと考えられる。彼らの行動が失敗に終わったことは、人類にとって明るい事態なのかもしれない。
(第三巻登場)
小さな魚などが群れをなして、まるで一個の生命体のように動くことを「群体」と呼ぶ。三巻に登場したこの宇宙怪獣(識別名称:ザザゴラス級)は、個々の戦闘能力は大して高くないものの、その驚異的な数によって人類側が手出しするのをためらってしまうような存在だった。その反面、個体の能力はあまり高くないらしい。全長は約40メートル。通常は灰色の巡航形態となっているが、戦闘となると一皮むけて攻撃的な容姿になる。とはいっても突撃による体当たり以外に目立った攻撃方法はなく、敵が前にいても、仲間が次々とやられても、ひたすら吶喊!というだけの宇宙怪獣だったりする。しかし、そんな単純な攻撃でも数がまとまっていれば十分脅威である。事実、攻撃を仕掛けてきたバスターマシン軍団を押しまくり、キャトフヴァンディスが覚醒しなければ、木星が粉砕されていたかもしれないのだ。
ここにあげられた三種の宇宙怪獣のほかにも、長い歴史の中で様々な宇宙怪獣が姿を現しているという。宇宙軍の中にはそういう調査をする機関も設けられており、一巻で登場した偵察型宇宙怪獣も、最近ツインテール級と命名された。
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かわいいトップレス見たさに押し寄せる宇宙軍兵士。士気とか覇気とかはかなり低そう。もっとも宇宙怪獣相手に普通の大人が戦うのは無理、と割り切っているのかも。 |
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